6.蒼さんの部屋

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 玄関に入ると、その先には廊下が前方に伸びている。そのさらに先のドアの向こうは――。 「きれい」  蒼さんに案内されてリビングダイニングに足を踏み入れた私は、予想もしなかった景色に息を吞んだ。  壁一面の窓に広がる真っ青な空を、飛行機がゆっくりと横切っていく。その下方には東京湾。 「気に入ったなら、よかった」 「狭いって言ったけど、広すぎるように見えます」  リビングダイニングだけで、二十畳くらいありそうだ。  白・グレー・黒で統一された室内はシンプルで、蒼さんらしい。 「まあ、一人で住むには広いか。あそこが仕事をする場所」  リビングの一角の本棚で区切られた所をのぞくと机があり、パソコン、そして積み重なった資料とペンが置いてある。本は開きっぱなした。きっと今朝も仕事をしていたのだろう。  窓と反対側には、アイランドキッチン。広いカウンターと一体化していて、スツールに座って食事をとれるようになっている。 「バスルームは廊下で、寝室はこのドアの向こう」  蒼さんはこつんと左側の壁のドアを叩くと、後ろから私を抱きしめ、覆いかぶさるようにしてキスをした。もうだいぶ慣れたけど、それでもどきどきする。上唇、次に下唇を吸ってゆっくりと弄ぶようにしてから、私の身体の向きを変えて自分の方を向かせ、今度は深く、深く口づけをする。  こうされると頭がぼうっとなって、体の奥で何かがうずく感じがする。  次第にそのもどかしさに耐え難くなり、私は蒼さんのシャツをぎゅっと握った。細身だけれどしっかりした胸。 「それ」  唇が離れる。 「何?」 「シャツを掴む仕草。最高にかわいい。理性が飛ぶ」 「……いいですよ、飛んでも」  怖いけど、覚悟はできている。 「そうか――朋花」  蒼さんは、優しいまなざしで私を見つめた。そして小さく息を吸って吐くと、言った。 「結婚してくれないか」
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