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「ニューヨーク?」
ってアメリカ合衆国のあのニューヨーク?
「ああ。七月から向こうで暮らす。ニューヨーク州の弁護士資格を取る必要があって。そのための勉強と、現地事務所での勤務で二年間の予定」
「それって、二ヵ月以内に結婚して外国へってことですか」
仕事、どうしよう。
「そうなる。朋花の職場との調整や準備が間に合わなければ、後から来るのでもいいけど。ごめんな、直前になって。第一希望のロースクールの結果が出るのを待っていたんだ」
「そうですか……」
さすがに返事に困っていると、蒼さんのスマホが鳴り、蒼さんは「ごめん」と断ってから電話に出た。
「……もしもし? いま取り込み中……何?……あ、やば。すっかり忘れてた――わかった、行く。じゃあ、後で」
「仕事ですか? 私のことだったら、気にしないでください」
「いや、違うんだ。急で悪いんだけど、一緒に来てくれる?」
「どこに?」
「友達の起業記念パーティー。ファンドを設立して」
「……すみません、無理です。私こんな格好――」
というのは、ゆったり目のコットンレースブラウスにデニム。靴は赤いバレエシューズだ。とてもパーティーに行ける格好ではない。
「一人で行ってください。ここで待っていますから」
「それはだめ。今日は離さないって決めてるから。俺が着替えたら、すぐ出よう」
三十分後。
スーツに着替えた蒼さんと私が銀座の老舗デパートの前でタクシーを降りると、そこには三つ揃えのスーツをビシッと着こなしたイケメン店員さんが待っていた。
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