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「蒼様、いらっしゃいませ! ご連絡頂き大変嬉しかったです。いつも私が知らない間に、お一人で買い物を済ませてしまわれるから。今日はいかが――お連れ様のドレスアップですね?」
精悍な見かけなのにテンション高めで少しだけオネエ口調の彼は、私を一瞥した。
「一時間半でセミフォーマルの装いに整えてくれますか。彼女は小沢さん。小沢さん、こちらは三宅さん」
「かしこまりました」
蒼さんに返事をすると、三宅さんは私に笑顔を向けた。
「小沢様、私、外商の三宅と申します。よろしくお願いします」
なんと、外商さん。
私は「よろしくお願いします」――と挨拶はしたものの、外商さんとお買い物って、初めてだ。選ばれた富裕層のみがお世話になると聞いている。これは尋常じゃない。蒼さんは弁護士で高収入かも知れないが、私は庶民だ。
「あの、蒼さん。外商さんとお買い物って、私、どうしたらいいのか……それにそんなお金、ありません」
そっと、蒼さんに耳打ちをする。
東京郊外に住んでいるとはいえ家賃はそこそこするし、節約生活の身なのだ。高級ブランドの服を買う余裕はとてもない。
「三宅さんに任せておけばいい。支払いは気にしないで」
「そんなわけには」
「俺が無理に付き合わせるんだから、これくらいするよ」
「小沢様。差し出がましいことを申し上げますが、男性からのプレゼントはそのままありがたく受け取ればよろしいのです。私の売り上げも伸びますし」
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