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三宅さんが言うと、蒼さんは笑った。
「そういうわけで朋花。二人で三宅さんの成績に貢献しよう」
「……はい……」
とは答えたものの、本当にいいのかな。
店内に入り、三宅さんに先導されてフロアを歩くと、お客さん達の視線が集まるのを感じた。
外商さんと一緒に行動するのって、やっぱり注目を浴びるんだ……。
今日の蒼さんは、いつもよりおしゃれだ。スーツはライトグレーの三つ揃いで、胸ポケットにはポケットチーフ。三宅さんはネイビーのスーツだが、やや細身なデザインで、彼の鍛えられた体のラインがきれいに出ている。イケメン二人に挟まれて、普段着でお団子ヘアの私はさぞ浮いて見えるのに違いない。
三宅さんは数店に立ち寄り、手早くドレスを数着選び出して腕にかけると、私たちを外商サロンの応接室に案内してくれた。
私はその中にある試着室で三宅さんの選んだドレスを順番に着たのだが、試着室から出るたびに男性二人に感想を言われるのは、くすぐったいような、変な感じだった。
「俺は、ライトブルーのがいいと思う」
「さようでございますね。色白でらっしゃるし、茶色みの強い髪ともよく合います」
ドレスが決まると三宅さんは売り場に電話をし、あっという間に、光沢のあるブルーのハイヒールが届けられた。
ヒールを履き、館内の美容室に案内されてヘアとメイクをしてもらい、終わるころに三宅さんと蒼さんが迎えに来てくれて、準備完了。
「あらー! 素敵になって!」
「きれいだよ、朋花」
「……」
こんなにストレートに褒められると、どう反応したらいいのか分からない。
いつものお団子はほどかれ、胸の下まである私の茶色いくせ毛は、きれいにウェーブがかけられている。自然に見えて、計算しつくされたプロの仕事。アシメトリーなカッティングとドレープが美しいライトブルーのひざ丈のドレスに七センチヒール、そしてクラッチバッグ――すべてが絶妙なバランスだった。
「まるで別人――あっ、失礼」と三宅さんは口元を覆ったが、蒼さんは「俺はこんな感じになると思ってた。髪は予想より長かったけど」と笑った。
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