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8.初めて
パーティー会場は、デパートのすぐ近くのレストラン。
銀座らしい時計店などが入居する建物の八階。天井が高く広々としたフロアには、カクテル片手に会話を楽しむお洒落な人たちが沢山いて、まるでドラマの中みたいだ。言われるままについてきてしまったけれど、緊張で所在ない。
「行こう。あそこにいるのが松山だ」
蒼さんに手を引かれ、何人かに囲まれて談笑している背の高い男性に近づくと、その隣にひときわ華やかな女性がいるのが目に入った。どこかで見たことが――「もしかして、女優の伊吹瑤子さん……?」
「やっぱり、わかる?」
私がきくと、蒼さんはさらりと答えた。
若手では人気・実力ともナンバーワンといわれる伊吹さんは、スリムな長身とスタイルの良さが映えるタイトな白いドレスを着ていて、華やかそのもの。彼女の周りだけ、ぱあっと明るく光っているようだ。オーラって本当にあるんだな。
「蒼さん、お知り合いなんですか?」
「小学校からの同級生。親同士が親しいのもあって、付き合いが続いている」
すごい交友関係……。
私は蒼さんと結婚して、本当に大丈夫だろうか。
弁護士という職業に整った容姿だけでも引け目を感じてしまうのに、家柄も不釣り合いかもしれない。たぶん蒼さんは、すごく恵まれた家の出身だ。
さらに私たちが近づくと、蒼さんに気付いた伊吹さんが華やかな笑顔を向けたが、一瞬だけ彼女の表情が曇ったように見えたのは、気のせいだったろうか。
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