10.偶然の再会

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 今日は久々の晴天で、双子はきゃっきゃと声を立てながらベビーカーに乗っている。 「晴斗さん、本当にありがとうございます」 「どういたしまして。でも俺こそ、ありがたいと思ってるんだ。朋花ちゃんたちが母と一緒に住んでくれて。おかげで、父がいなくても母は寂しくないし、俺も安心して海外で仕事ができる。でも、いい相手が見つかったら、母のことは気にせず結婚しなよ」 「え?」 「朋花ちゃんなら、またいい出会いがあるんじゃないかと、俺は思う」  ベリーショートの金髪に鋭い眼光、ストリート系のファッションというちょっと悪そうな外見の晴斗さんは、すごく繊細な気遣いのある人だ。 「……ありがとうございます。でも、私はもう結婚しません。だからご迷惑にならない限りは、温子さんのお宅にご厄介になります」  そう決めて、二人を産んだのだ。 「もしかして、まだ双子の父親のことが忘れられない?」  私はうなずいた。 「とても好きでした」 「じゃあ、なぜ別れた?」 「――もし私と結婚したら、その男性の運命を変えてしまいそうで、それが怖かったんです」 「――そっか」  そう言ったきり晴斗さんは黙ってしまったので、私も黙ってベビーカーを押した。双子はさっきからご機嫌で、今は、向こうからやって来るゴールデンレトリバーを指さし、 「ままー、わんわん!」 「はるとしゃんー、いぬー」 と騒いでいる。隣を見ると、晴斗さんの横顔には笑顔が浮かんでいて、こういう表情の時はちっとも「悪そう」じゃないんだよな、と私は思った。温子さんは品のある美人で、晴斗さんもその容貌を受け継いでいるのだ。 「あのさ」  こちらを向いた晴斗さんと目が合った。 「はい?」 「俺だったら、好きな女に運命狂わされたら嬉しいかも」 「え?」 「そいつも、朋花ちゃんのために運命が変わっても、本望だったんじゃないかって俺は思う。いや、同じ男でも考え方は違うかもしれないけど」  そうだろうか。 「まあ、ともかく朋花ちゃんはかっこいいよ。貫いてる感がある。その男に対する気持ちを。でも、相手は子どものことを知らないんだろ? なんだか腹が立つ。どんな奴だよ、そいつ。あ、これは答えなくていいけど」 「すみません……」 「いや、いいんだ。こっちこそごめん」  その話題はそれきりで、やがて私たちは病院に着いた。
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