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N総合病院は国内でも有数の名門病院で、たまにセレブの入院先として話題になる。なぜ真帆と理帆がこの病院で検診を受けるかというと、ここで生まれたからだ。
妊娠した当初は個人病院で診てもらっていたのだが、双子はリスクが高いということで、先生が紹介状を書いてくれて転院したのだ。
受付を済ませ、列の後ろで待っていてくれた晴斗さんと双子の所に戻ると、ベビーカーに座っている真帆と理帆はにっこり笑い、二人そろって「いけめん」と指さした。
「いけめん?」
振り返ってその小さな指が指す先を見て、私ははっとした――。
蒼さん?
紺色のスーツを品よく着こなしたすらりとした男性は、遠目には蒼さんによく似ている。
まさか。こんなところで――。
いや、見間違うわけがない、蒼さんだ。帰国したんだ。
「たしかにイケメンだな。真帆と理帆、男を見る目があるぞ。でもそれより俺は、隣の女性が気になる――あれ? もしかして、女優の伊吹瑤子じゃないか? すごいなあ、目立たない格好をしていてもオーラがだだ漏れ。さすがだな」
蒼さんと伊吹さんはエスカレーターを降りたところで、スーツ姿の蒼さんの横に立つ伊吹さんは、白いTシャツにルーズなデニムを合わせ、ジャケットを羽織っている。ひっつめ髪にサングラスをかけているが、その美貌は隠せない。
やっぱり二人はお似合いだ。納得しているのに、胸がぎゅっとなる。
私の気持ちをよそに、双子は「いけめん、いけめん!」とはしゃぎ始めた。
男の人を見て喜ぶことなんて、ないのに。もしかして何か感じるのだろうか。
気付かれる。早くここを離れなくちゃ――そう思った時にはもう遅く、蒼さんの視線は双子に向き、それから――私と目が合った。
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