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結芽
青い空。
草の匂い。
春の日差し。
やっとだ。やっと...
「やっと!旦那様に会えるぅぅぅ!!」
道の中央で空に向かって大絶叫している白無垢の童、名を結芽。
大きな屋敷の門前でぴょんぴょんと跳び跳ねながらくるくると回っていると通行人の視線に我に返った彼女はコホンと咳払い。
落ち着け、結芽。
何度も夢見た彼がいるからってはしたない真似をしちゃ駄目。
おしとやかに、礼儀正しく...
「た、たのもぉぉぉ!」
春一番のつむじ風のように屋敷内に響く女児の声に騒がしく門は開いた。開いた扉の中から現れたのは黒いスーツを纏った大柄の男達。
「なんじゃなんじゃ敵襲か?!」
「ここがどこか分かっての無礼か!」
厳つい顔で各々目の前にいる睨み啖呵を切ると結芽はそれに驚くわけでもなくにこりと笑いその場に座り込んだ。
真っ白な花嫁衣装である羽織を手で払い膝をつき、三つ指揃えて頭を垂れた。
「お初にお目にかかります。
結芽と申します。今日からお世話になります。不束者ですがよろしくお願いいたします」
「....は?」
誰とでもなく、音が漏れる。
続かない言葉の返事を返すように結芽は
顔を上げにこりと笑った。
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