雲行き

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パラパラと灰が舞う。 外に出ては何度も視た夢だ。 見渡す限り焼け野が原で、どこかはわからない。 両足の骨がきしむ。 一歩、また一歩と足を運ぶ毎に激しい痛みと震えが襲ってくるが止まってはいられない。 早く。早く。 熱気に肺が焼ける。 それでも早く行かなければ。 ごうごうと炎が空を焼く中をひたすら進んで、黒炭の瓦礫の中に人影を見る。 あぁ... 声は枯れた。 ひゅーひゅーと乾いた風だけが喉を抜ける。 瓦礫から見える女性の顔に涙が出る。 私の髪を結ってくれた、甘い菓子をたくさんくれた。 妹だといってくれたのに。 赤い炎はそれを飲み込んでいく。
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