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「ごめんなさい。リフォーム会社のセールスマンかと思って」
小さく頭を下げる。結構背が高い。
「スーツかと思ったら制服なんだね。学生なの?」
そう聞かれて、少しむっとした。
そんなに老けて見えますか?
返答をごまかすように彼はハハハと笑った。低くてきれいに響く独特な笑い方だった。
「綺麗な庭ですね」
「そう?少し散歩していく?」
その落ち着いた言葉に、この人は自分より大人なんだと感じてなんだか少し怖くなった。
「また今度にします」
「じゃあ、またね」
またなんてあるのかな。その時はそう思った。
その人は篠田さんというらしい。
次に見かけた時に教えてくれた。
「また会ったね?偶然?」
「そうですね」
実は偶然ではなかった。少し怖いと思ったのにもう一度会ってみたくて、その後何度か家の前を通っていたのだ。
「ひょっとしてご近所さんなのかな?」
「はい」
2本先の道を曲がったところに住んでいると話すと篠田さんは目をまんまるくした。
「知らなかった」
「僕も」
「学生さんならご近所付き合いなんてしないかな?」
「あなたは?」
「僕は会社員だから、普段はあまり家にいないんだ」
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