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僕が立ち止まって待っていると、パタパタと自転車を押して追いついた。
吐く息が白い。寒さで頬が少しだけ赤くなっていた。
「こんな日にも学校?」
補習です。と答えると納得した。
「こんな日に自転車ですか?」
「修理に出してたのを取りに行くように頼まれて」
「こんな日に?」
「人使いが荒いんだ」
それは例の『奥さん』だろうか?聞いてみたいけど、やめておく。代わりにもっと話したいことを話そう。
「刑事コロンボのこと調べましたよ」
「本当に?」
「フォークはピーターフォークって俳優さんの名前が由来なんですね」
「そうだよ。わざわざ調べてくれたの?」
否定するのも肯定するのもなんだか恥ずかしくて僕は返事をしなかった。
篠田さんも静かにしていた。
湿った道路には、ところどころほんの数ミリだけ雪が積もっていた。
「最後に自転車に乗ったのいつ?」
篠田さんは穏やかな声で僕に囁いた。
「2年生の時までは乗ってたかな」
「そうなんだ。今は3年生なの?」
「はい」
「もうすぐ卒業?おめでとう」
「実は去年留年したんです。今年は補習を受けて何とか卒業出来そうです」
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