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さらに、筋の通らないことを盲目的に信じて主張している、と気づいてからは、ますます、父はおかしいという考えは強くなった。
回数券をご存知だろうか。父は、当時小学生の私に磁気回数券を使わせていた。五回分の値段で七回乗れる、といったものである。
確かにお得ではあるのだが、それは元が取れる回数以上使った場合だけである。私が利用していた鉄道の回数券には使用期限があり、期限が切れると無効になるというものだった。
父は、回数券を買い込んだはいいものの、よく使いきれなくなっていた。
四則演算ができるようになっていた私には、使いきらずに捨てる回数券は、お得でないどころか割高だとわかっていた。
しかし、父は頑なに、回数券はお得だ、と主張した。
いくら従順だった私でも、己の四則演算能力がそこまでポンコツだとは思っていなかった。
学力がつくにつれて、そして、家庭以外の世界を知るにつれて、父の異常性を私は突きつけられたのだ。
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