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あれから時は流れ、私は少し大人になった。
父は宇宙人である。私はそう思っている。
今になって例の振込手数料発言を思い返すと、仕送りは、と私に問われたとき、父は己の非を認められなかったのかもしれない。
忘れていたと言うのが恥ずかしかったのかもしれない。
一度、「振込手数料がかかるから、振り込めない」と言った手前、撤回するのは父のプライドが許さなかったのかもしれない。
ひょっとしたら、父の頭の中では「振込手数料がかかるから、振り込めない」という理屈が本当に成立するのかもしれない。
真実はわからないのだ。
そして、ひょっとしたら、「振込手数料がかかるから、振り込めない」という理屈が通じない私は、父にとっては「宇宙人」なのかもしれない。
けれど、そんなことも水に流してしまえばよいのだろう。
今の私は、あの面接官が言うところの、「人間味」のある生活を送っているのだから。
父を宇宙人だと割り切り、父を信用しなくなると、私の人生は変わった。
最初から信用しなければ、騙されたと思うこともないのだ。約束を守らないだの、行動が理解できないだの、言動がおかしいだのと、思い悩むこともない。
お互いに「宇宙人」だと思っているくらいでよいのかもしれない。
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