振込手数料がかかるから

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 さて、仕送りが滞ろうが何だろうが、私は日々生活し、大学に通い、学業を修めなければならない。私の生活がどうなったか。きっと、アルバイト三昧の生活、と想像されるのだろうけど、実際のところは少し違う。  大学生のお金を得る手段といえば、アルバイトが王道なのだけれど、私の所属していた学部はとんでもなく授業数が多く、週五日、毎日一限から五限まで講義でうまるなんて時期もあったくらいで、平日にアルバイトを入れるのは難しかった。私は土日に働いていたけれど、収入には限界があった。  そして、ここで、さらなる災難が追い打ちをかける。大学教員から、土曜日のアルバイトを辞めろとしつこく迫られる、という、大抵の人は経験しないだろう嫌がらせにも出くわしたのだ。  「学生の本分は学業でしょ」と繰り返す教員によるハラスメントによって、アルバイトを増やして稼ぐという手段は非現実的だった。  この、大学教員による「アルバイト辞めろ事件」も語りたいところだけれど、この話を始めると、話が大いに脱線し、二度と帰ってこられそうもないので、今回はやめておく。  というわけで、収入を増やすことに限界があった私は、極限まで支出を減らした。家計簿は収入と支出から成り立つのだ。それ以上でもそれ以下でもない。  自炊で食費を切り詰め、趣味にお金は使わない。嗜好品もご法度。交通費のかかるつきあいもしない。これが、あの面接官の言う、人間味のなさ、の原因だったのだろう。  大学と家の往復、休日はアルバイト。人間味がない、と評されても、なるほどぐうの音も出ないな、と今でもそう思う。
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