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就職活動のニュースを見ると、きまって思い出すことがある。私が大学生で就職活動をしていたときのことだ。
あなたには人間味を感じない。
とある企業の採用面接官に私はそう言われた。
彼はこうも付け加えた。人間味を感じられるエピソードはないのか、と。
思い出す度、こんな質問をされた学生があの頃どれだけいたのかしら、と少し面白くなる。あの面接官は、私に人間味を感じなかったらしい。それなら、ロボットだとでも思ったのかしら。
採用面接という場での発言として適切かどうかは疑わしいけれど、一方で、私には、彼が言わんとしていることがわかってしまっていた。
だから、私は、ちょっと困ったふうに、そういったエピソードはありません、と返答した記憶がある。社会人ならばひねり出すのが正解なのだろうけど、当時の私には、ないものはなかった。
彼の言う人間味を感じられるエピソード、というのは、旅行とか飲み会とかサークル活動とか趣味とか、そういう学業以外の、真面目一辺倒ではないエピソードのことだ。そして、大学生の頃の私は、そういったものに縁がなかった。まったく、と言ってよいほどなかった。
学業とアルバイト、それだけで私のすべてだった。
そんな馬鹿な、と思われるだろう。けれど、本当の話だ。
真面目一辺倒、無味乾燥な、彼の言うところの「人間味」のない生活。
私がそんな人生をおくっていたそもそもの原因は、私の父が宇宙人だったことにあり、そして、父が宇宙人であると私が気づくのが、あまりにも遅すぎたことにある。
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