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俺が守るから
温かい何かに包まれ、ぐっすりと眠ってた。
そういえば、小さい頃、父が出張でいない時に、両親の寝室で、母に抱きしめて貰って、眠ってた。
厳しい父だから、予定変更で深夜に帰宅した際は、容赦なく叩き起こされ、部屋に帰されたけど、母の温もりを感じられたその時間が私にとって、幸せを感じられる唯一の時間だった。
「……離して……下さい」
目覚めたら、白いワイシャツとネクタイが目に入る。
堅い胸板しがみつくように眠っていた私は、意識を失う直前の記憶を思い出す。
「離したら何しでかすかわからないから離さない」
早朝4時に起き、4時半に秘書の迎えで休日出勤だった雅人くん。
ほぼ休みなく働いていて、疲れが溜まってると思う。
「……トイレ行きたいの!!」
「お姫様、お連れします」
横抱きで抱き上げられ、トイレまで連れてかれ、降ろされる。
「あっち行って」
トイレの前で待たれるのは、嫌だ。
父の言いなりになって、雅人くんと結婚させられる現実から逃れたくて、方法を考える。
貯蓄は2500万円超えた。
隙を狙って、この家から抜け出し、また極貧日本一周旅行に出て、各地を転々と渡り歩き、身を隠そう。
貧困OL くららのチャンネル引退し、“放浪アラサー女子のその日暮らし”のYouTuboチャンネルを新たに開設して、その広告収入とLIVE配信の投げ銭で細々と生活をしよう。
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