散って、積もって、また咲いて

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「俺は(たける)。今日からよろしくな!」 「よ、よろしく…。」 小学2年生の春、桜舞い散る季節に僕は、親の仕事の都合でこの街に引っ越してきた。 初めての転校、知らないクラスメイト。 緊張と不安で頭が一杯だった僕に話しかけてきたのが隣の席の尊だった。 「好きなスポーツとかある?」 「サッカーとか…」 「まじ!俺もー」 尊は明るく元気でクラスの中心的な存在の男子だった。 転校したての僕を気遣ったのか、単に自分の興味本位なのか分からないが、積極的に話しかけてくれた。 好きな事…昨日見たテレビ…親の仕事…。 お陰で僕らが友達になるのに時間はかからなかった。 尊はスポーツは得意だけど勉強は苦手で、たまに宿題を見せてあげたりした。 僕と同じくサッカーが好きで休み時間によくグラウンドでPK対決をした。 運動神経が良くてクラスの人気者。そんな尊に僕は憧れていた。 「…であのときの本間のシュートがさー」 「近藤のパスも最高だったよなー…」 小学生の高学年になると、僕らは同じサッカークラブに入った。 パスやシュートの個人技能にチームの連携。 お互いに意識しながら、時には競い合うようにして切磋琢磨する。 そうしてヘトヘトになって帰る毎日だった。 お互いに色々とダベりながら帰る夕暮れの道。 この何気ない時間に僕は、練習中や試合中よりも充実感を得ていた。 「そういや今日監督に褒められたな!」 「あぁ、良いコンボネーションだってね」 尊はチーム随一のストライカーとして、僕はそれを支えるポジションとして。 僕らのコンビは試合で確実に結果を残していった。 この調子なら数年後には二人がチームを引っ張る、と監督が語っていた。 と言っても僕は尊にボールを繋いでいるだけ、結果を残せたのは尊の技能があってこそだ。 「やったな!次の試合も頑張ろうぜ!」 「……おう」 良いコンビネーション……。 僕からすれば尊が全部引っ張ってるようなものだけど、そう言われて悪い気はしない。なんだかくすぐったい感じだ。 そこでふと思った。 僕にとって尊はよき親友であり、憧れの対象でもある。 そんな尊は僕のことをどう思っているのだろう。
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