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ストーカー被害に遭っていると打ち明けたのは、いつも冷淡な彼に心配してほしかったからだ。でもいつも通り彼は「それで?」とだけ、言った。
「あ、いや…」
「警察にでも相談すればいいだろ。俺に言って何になる」
「…ごめんなさい」
ネクタイを結んで、私が持っていたジャケットを奪って羽織った。「今日は遅くなる」という言葉に、今日"も"でしょ、と吐き出せない不満を心の中だけで呟いて「わかった」と返事をした。
黒いカバンを持って彼が玄関を出る、この瞬間がいつも苦しい。今日"も"仲良くできなかった。
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