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その日から数年後。私のお腹には子どももできて、慎ましくも幸せに暮らしていた、ある日のこと。私はあるものを見つけて目を疑う。
子どもが生まれるからと、もう一回り大きい部屋に引っ越すために部屋を片付けていたとき、それを見つけた。
彼の部屋にあった埃を被った古いアルバム。彼の卒業アルバムだ。初めて見たそれを、何の気なしに開いてみた。
「…え?」
彼の学生写真の斜め下に、見覚えのある顔。若く初々しさがまだ残るが、確かにそれはあの日のストーカーだった。
偶然だろうか。いや、偶然にしても同じクラスメイトのことだ、彼は気づくだろう。顔で判断できなくても、身分証だって見たのだ、名前で一致しないわけがない。だとすれば、あのストーカーはもしかして最初から彼が…
「おい、何してる」
後ろから声をかけられて慌ててアルバムを閉じた。埃が舞う。日光に反射して、キラキラと光るそれを見ながら、辻褄を合わせた。
きっと偶然なんかじゃない。私はずっと彼に騙されていたのだ。彼の罠とも知らないで、彼の自作自演だとも気づかないで私はまんまとあなたに心酔した。
「ううん、なんでもないよ」
あなたは、私のことがこんなに好きだったのね。
終
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