少年の発見

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「ここですね」  マイカは喜びに溢れた。だが、レンは眉を寄せていた。 「天井を見ろ。ヘルバットだ」  マイカが見上げると、黒い天井にほぼ同化していたが、巨大な黒い蝙蝠が逆さにぶら下がっていた。醜怪な唇から、白い牙が2本覗く。 「止むおえん。目的物確保のためだ。戦闘を開始する」  言うが早いか、レンは風力魔法を展開し、巨大な風の刃を天井に放った。ズン。と轟音が響き、天井が崩れる。 「ギャウッ」  崩れた天井に下敷きになったヘルバットが、叫び声をあげる。破片をパラパラと落としながら、軽やかに飛翔した。  先制攻撃に成功したとは言え、天井に下敷きになったまま息絶えるような軟弱なモンスターは、深部には存在しない。  鋭い爪が、マイカを襲う。  マイカは白い爪が胸元をえぐる瞬間、一歩下がり、寸前のところで回避した。魔法石の胸当てが爪に当たり、火花を散らす。  小さく避ける方が、大きく避けるよりも反撃に転じやすい。マイカは斬鉄銀のナイフを投げた。鋼をも貫くナイフが、ヘルバットの翼に刺さる。そのまま壁に串刺しにしてしまいたかったが、威力が不足していた。 「ギャオオン」  ヘルバットが高いうなり声をあげる。鼓膜が痺れるようだ。マイカの背後から、無数の氷柱が駆け抜けた。レン得意の氷結魔法だ。透明な刃が、コウモリの真っ黒な毛皮を切り裂いて、壁に叩きつける。傷口からはどろりとした緑色の血が流れ落ちた。  今だ。飛翔系のモンスターは、空中にいるがゆえ強いが、ひとたびその上を取られると、急激に弱体化する。マイカは紫電のムチを崩れた天井に向け、飛び上がろうと準備した。しかし、ムチはするりと岩肌を撫でるだけだった。  しくじった。だが、今は失敗を悔いている時間は無い。火炎呪文で特大の火球を作り、ヘルバットに投げつけた。的中、とはいかないものの、黒い姿が炎の中に没した。 「まかせろ!」  レンが炎熱の中に突進した。杖の先、赤い魔道石がきらめく。得意呪文、ライトニングだ。敵に密着しなければいけないという欠点はあるが、高圧魔力を一点から放出するため、威力が高い。    レンはヘルバットの真ん前に躍り出て、ライトニングを放った。魔力の奔流が、壁に穴を開ける。だが、ヘルバットは倒れなかった。右の羽が付け根から吹き飛んでいたが、本体そのものは無事だ。この距離で外した。なぜだ。 「ギャオオン」  黒いモンスターが再びうなり声を上げる。 「聴覚かく乱です」  マイカは気づいた。このヘルバットは、叫び声に特殊な音波を用い、敵の平衡感覚を狂わす。    レンも気づいたようだ。だが、モンスターの前に棒立ちになり、回避行動を取らない。
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