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「でもさ、行きたいところがあるって言われて、いきなり指輪買いに行くとかって驚くじゃん?サプライズ過ぎだって」
「こうでもしないと、秋穂、一生、指輪しなさそうだったから」
サイズ直しも必要なかったから、ショップで購入手続きを済ませた後、そのまま指輪は秋穂の薬指に落ち着いた。「メッセージを入れられますよ」と言われたけど、それはこれからあつらえる予定のお揃いの結婚指輪にいれようということになったし。今日のそれは婚約指輪だから。
「あのさ、唯」
「何?」
「結局、私、まだ聞いてないと思うんだよね」
「何を?」
「いきなり指輪からってさ」
「もしかしてプロポーズのこと言ってる?それとも俺からの告白?」
「それはどっちも?」
「して欲しい?あれだけ俺の気持ち聞くの嫌がったのに?」
「そんな風に言うなら、別にいいけど。ただ、いきなり過ぎたというか・・・」
珍しく秋穂のちょっと拗ねるような声が聞けたのは儲けもの。
「秋穂が関係性を変えたくないとか、いろいろ面倒なこと言うから。畏まって、そういうことしたら、また逃げそうかなって、わざわざ避けたんだけど?」
「それは、確かにそうかもだけど、でも、やっぱり、いきなり指輪という展開は・・・」
「やっぱり、ちゃんと言った方がいい?まぁ、俺的には、もう、言っても言わなくてもどっちでもよくて。秋穂がそばにいてくれればそれで良いって思うことにした。だから、秋穂が俺の気持ちに答えるのがまだ難しくても、せめて指輪だけしてくれてたらって、秋穂はもう売約済みですよの証明みたいなものになるのかなって」
「うん?」
「寛一郎の指輪を嵌める前に俺のをして欲しかったっていうのが大きいけど。正直言えば、秋穂とすぐにでも結婚したいけど、タイミングは秋穂が決めていいし。なんなら入籍も子供出来たら考えるでもいい。苗字は宮代でも芦原でもどっちでもいい。」
「そんなこと言うと、お父さん悲しむんじゃない?」
「大丈夫、もう言ってあるから」
「言ってある?」
「両親、向こうに永住考えてるらしいよ」
「マジで?」
「だから、あの家、二人で自由に使っていいって。リフォーム計画でもたてようかと思ってる」
「そんな話までしてたの?」
「結婚とかの話しになると、またお母さんのこととかで、秋穂がいらぬこと考えそうだったし。とりあえず環境だけ先に整えておこうって。秋穂の気持ちはゆっくりでいいから」
「手回し良すぎませんか?」
「そんなに誉められると」
「誉めてないし。その・・・お母さん、なんか言ってた?」
「別に。言われたところで二人の問題だし。面倒なこと言われて、また秋穂に逃げられたら、たまんないと思って。だから先手を打っておきました」
お母さんの話すると、秋穂は今でも分かりやすく表情曇るもんな。それは昔から変わらないまま。秋穂のトラウマの闇、かなり深くないか?
まぁ、今となっては、どうでもいいわ、そんなの。秋穂のそばには俺がいるし。
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