3. 母の疑惑

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 次の日、学校から帰ると一階には誰もいなかった。  洗面所で手を洗い、二階の自分の部屋へ行こうと階段を途中まで上がると、両親の部屋から争うような声が聞こえてきた。 「だって、あなただって……」 「そんなの理由にならないだろ……」  そんな言葉が聞こえたが、私が二階の廊下を軋ませた音で、二人の声は止んだ。 「美里? 帰ってきたの?」  母が部屋から出てきて、無理に明るい声を出した。 「おやつ用意するから、着替えたら下りてきなさい」  母はそう言うと、一階に降りて行った。  両親の部屋の横を通ると、父が畳に座っており、目の前にはA3サイズの白い紙が置かれていた。 「美里、おかえり」  父は慌てたように白い紙を畳み、何事もなかったように笑顔で言った。  その日の夕飯は家族皆が揃った。祖母と弟はいつも通りだったが、両親の間には気まずい空気が流れていて、そんな二人が気になる私も口数が少なくなっていた。  その夜もまた、ひそひそ鬼の声が聞こえた。 「とうとう亭主にバレたんだろう」 「ああ、そうだね。そりゃ、わかっちまうね」 「あれは離縁かね」 「そうだね。離縁しかないね」 「母親の方はもう次が見つかってるからね」 「まあ、計算高い女だからね」
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