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すると梢ちゃんが私に気づき視線を動かしたので、それに釣られて島田さん達が振り返る。と、何事もなかったように、島田さん達四人は梢ちゃんを置いてゲームセンターの方へ行ってしまった。
ほっとしたような顔の梢ちゃんと目が合うと、梢ちゃんは私の方に歩いてきた。
「美里ちゃん、こんにちは」
「こんにちは」
「どこに行くの?」
「本屋」
「私も行っていい?」
「え、いいけど。いいの?」と、私はゲームセンターの方に顔を向ける。
「うん。いいの」
梢ちゃんは力強く肯いた。
二人で本屋に入り、中高生向けの小説の棚に行く。実は梢ちゃんもジュニア向けの小説のファンで、お互い読んでいる本が似ていることがわかった。
お互いが読んでいないおすすめ小説を教え合ったり、一番好きなシリーズもののキャラの話をしていたら、あっという間に三十分が経っていた。
「梢ちゃん、お昼食べに行くよ!」
しかし、楽しかった時間は島田さんの声で終わりになった。
「ごめんね。行くね」
梢ちゃんが困ったような、申し訳なさそうな顔で言った。
「うん。また学校でね」
「うん。バイバイ」
梢ちゃんは既に歩き出した四人のあとを追いかけて、フードコートの方へ去って行った。
楽しかった分、最後がなんだか寂しかった。
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