4. 暗鬼

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4. 暗鬼

 夕方、両親が帰ってきて家族で夕飯を食べた。両親からは昨日の気まずい感じはなくなっていたが、どこか疲れているようだった。 「実は皆に話があるの」  食事が終わると、母が皆に急に宣言した。そして父に、「ほら、あなたから」と目配せする。とうとうきたかーー。 「実はーー」と父が口を開いた。 「いやだ、離婚なんてしないで」と、私が邪魔をする。 「はあ?」  母が驚いて声をあげる。 「知ってるよ。二人が離婚するの。ひそひそ鬼が話してたから」  さすがに、祖母や弟がいる前で、母の浮気でとは言えなかった。 「ひそひそ鬼?」と父が言う。 「っていうか、美里、何言ってるの?」と母も言う。 「だって、お母さん、最近帰りが遅いし、喧嘩してたじゃない」 「あ、あれは……」  母は黙ってしまった。それが証拠じゃない! 「絶対嫌だ。別れちゃだめ」  私が泣き出したので、弟はオロオロしている。 「美里」と父が優しい声で言った。「お父さんとお母さんは離婚なんてしないよ。そんな話は一度もしたことがない」 「えっ」 「今日、話をしたかったのはね、僕の仕事のことなんだ」 「仕事?」私は父を見る。 「うん。なかなか正社員の仕事が見つからなくて皆に心配かけてたけれど、実は今の介護の仕事にやりがいを感じてね、ちゃんと資格を取って正式に働こうと決めたんだ」
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