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2. 転校
前年の暮れ、父と母、中学二年の私、それに小学五年の弟健人の家族四人で、母の故郷であるこの町に越してきた。
父がリストラされ社宅を出なければならなくなったが、再就職先が決まらず、母の実家を頼ることになったのだ。実家には祖母が一人で暮らしていた。
その家は古い大きな一軒家で、部屋数だけは沢山あった。私は二階の一番奥の部屋をもらい、その手前が弟、そのまた手前が両親の部屋、祖母は一階で寝起きしていた。
父は祖母の知人が経営する介護施設を手伝いながら再就職活動をし、母は近所のスーパーでパートを始めた。弟は地元の小学校に入り、野球少年団にも入り、友達ができて楽しそうに通っていた。
私はと言えば大きな家に越して、狭い社宅では叶わなかった一人部屋がもらえたことは嬉しかった。でも正直、元の学校の友達や先生と別れて田舎の中学校に転校したことについては不満だった。
転校しなければならないと知った時はかなり抵抗したが、最後は大人の事情の話を聞かされて渋々納得するしかなかった。
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