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「ほんとに、可哀想にね。騙されても気づかないなんてね」
「あの子は信じやすいからね」
その夜、ひそひそ声で目を覚ました。
「まさか、『全然やってない』を信じるとはね」
「皆、今頃必死で勉強しているのにね。あの子はまんまと騙されて寝ちゃったよ」
「ほんとに愚かな子だねえ」
えっ? これって、私の話? 声の正体よりも、梢ちゃんが私を騙してる疑惑が気になった。まさか、優しい笑顔の梢ちゃんが私に嘘つくなんて……。私は布団の中に潜り込み、耳を塞いで眠った。
中間考査は今までの貯金のおかげで赤点にはならず、平均点よりちょっと上の成績が取れた。
英語の答案が返された時、梢ちゃんの答案を覗き込んだら、91点だった。やっぱり、勉強してる。嘘つきじゃん。
「凄い! 梢ちゃん、勉強したんだね」
内心の憤慨を隠して、私は明るく梢ちゃんに言った。
「違うよーー。たまたま、ヤマが当たったのよ。それより、美里ちゃんも赤点ぎりぎりなんて、全然違う、凄いね!」
梢ちゃんは私の答案を見て言う。
「私もたまたまだよ」
私は63点の答案が恥ずかしくなって、今さらだけど隠した。
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