2. 転校

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 そんなある晩、押し入れからまたひそひそ声が聞こえた。 「あの娘はバカ正直なんだね」 「ああ、そうだね。素直すぎるね」 「今日もあったね」 「ああ、あれだね」 「帰りに遊びに誘って断られていたね」 「そうそう。『今日はピアノのお稽古だから』ってね」  そこまで聞いて、自分と梢ちゃんのことだと気がついた。今日、梢ちゃんに放課後、一緒に国道沿いの商業施設に遊びに行かないかと誘ったら、ピアノだからと断られていた。 「あれは嘘なのにね」 「そうだよ。嘘だね。本当はクラスの仲良しを家に呼んでいたのにね。あの子は呼ばれていないけどね」 「まんまと騙されたね」 「可哀想にね」 「本当に、本当に」  そうだったのか……。  そりゃ、急に家を行き来するような間柄になれるとは思っていない。でも、それよりも嘘をつかれたことがショックだった……。  次の日、登校して自分の席に座っていると、梢ちゃんが教室に入って来た。 「おはよう、美里ちゃん」  梢ちゃんがにこにこ笑って声をかけてくれたが、「おはよう」と答える私の声は少し曇っていた。
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