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梢ちゃんが席に着くと、前の席の島田さんが後ろを向き、「梢ちゃん、昨日はありがとう! また遊びに行くね」と親しげに声をかけた。
「う、うん」
梢ちゃんはちらっと私を横目で見て、困ったように肯いた。
(やっぱり……)
私は昨日の押入れの会話が嘘ではなかったと確信した。
そのことがあってからお互い気まずい感じがして、梢ちゃんとはそれ以上の友達にはなれなかった。時々、梢ちゃんの視線を感じることはあったけれど、私は気づかないふりをしていた。
梢ちゃんは島田さん達と相変わらず仲良さそうだし、席替えもあり私は隣になったルミちゃんのグループに入れてもらった。といってもそこは皆、アニメ好きや漫画好きなど我が道を行くタイプ、一匹狼の集まりみたいなところで、思っていたのとは違い寂しい感じがしていた。
ある時、台所にいた祖母に聞いてみた。
「ねえ、おばあちゃん。この家に鬼はいる? 押入れの中でひそひそ話す鬼」
「鬼? さてなあ。座敷童子ならわかるども」
「そうなんだーー」
「美里」と祖母は私の名前を呼んだ。
「いいか。陰の者には関わっちゃいげねえよ。あれは人間を騙すものだがら」
そう祖母は言ったが、私は『ひそひそ鬼が言うことは当たっているのに』と内心思っていた。
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