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遺言
亜優が旅立ってから数日後、俺はあるものを渡された。
昼休み、教室で友達と話してると手招きして俺を呼んだ。
「これ、亜優が書いてたの。文通してて、書き途中だけど……」
亜優の幼馴染、華名が渡したのは紫の桜と、透明感のある桜が描かれた手紙だった。
「……ありがとう。わざわざ」
「ううん。私達、手紙でさ彼氏へのメッセージを書こうって文通してて。別に遺言とか意味じゃなくて、ただそうしようってなって。でもまさか、遺言になっちゃうなんてっ――」
涙ぐみながら華名は、語った。
「だから読んであげて」
「うん」
それを伝えると、華名は自分の教室へ戻って行った。
「――亜優の?」
隣にいた千夜が手紙を見て、聞いてきた。
「うん、そう。書きかけらしいけど、俺宛てだったらしい」
「そっか。きっと、友稀に向けて良いこと書いてくれてるよ。亜優なんだから」
「――だな」
亜優はもういない、そんな実感が湧いてくる。
一緒に帰ることも、喋ることさえ出来ない。
もう二度と、抱きしめることも出来ない。
結局、亜優を抱きしめたのは2回だけだった。150センチちょいの身長は、昔から知ってるから余計泣けてきた。
バカみたい、そう思ったけど、涙が止めることは出来なかった。
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