桜雨

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桜雨

 貰った手紙を俺はよく亜優と遊んだ公園で読むことにした。  ブランコと、月形の砂場、芝生がある公園で、少し高い台にあったからよく競争して登っていたのが懐かしい。この公園で俺達は成長したといっても過言ではないほど、よく訪れていた場所だ。  ベンチに腰を掛け、手紙を開くと便箋が2枚が入っていた。 友稀へ。 華名と話してて、『彼氏に手紙書いてみない?』そんな一言から書くことにしたの。 こうやってちゃんと手紙を書くのは、はじめてだよね? いつもは紙切れとか、メモとかで話すもんね。 文が嫌いな友稀のために、短い言葉で書いたから 最後まで読んでね。 まず、ありがとう。 好きでいてくれて、私を受け入れてくれ、 まだまだ伝えたいことがあるけど、多分どんな形でも伝えきれない。 私はそう思うの。 私をありのままで受け入れてくれたとき、嬉しくて何も言えなかった。 昔から知ってるからかな? 意地悪で、いたずらばっかりしてたのに こんな頼りになる人なんて、想像もしてなかった。 別れたくないし、離れたくもないけど、 もし私と別々の道を歩むとなったら―― 私を忘れて? 私のことを忘れて、新しい道に進んでほしいから。 でもきっと、嫌だって言うだろうね。 私だって嫌だけど、ずっと友稀が私にとらわれているのも嫌。 幸せになって欲しい。 ごめんね、暗い話になっちゃって。 そして、今年も一緒に桜見たいね。 私にとって色々な思い出が詰まったものだから、 あの校門前の桜の木がいいな。 最初に出逢ったのも、桜の木の下だったよね? 桜が巡り逢わせてくれたのかと思うの。 最後に。 その無邪気な笑顔も、真剣な眼差しも、 私は全部大好きです。 愛情表現も少なかったけど、それで良かった。 隣に居てくれるだけで、幸せで。 これからも永遠に、桜雨が降りそそぎますように。  読み終えると、涙が止まらなくなった。 「亜優っ……!!」  また、手紙に視線を下ろすと便箋が2枚あったのを思い出した。
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