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第十章 驚
リク…リク…!何で私を置いていったの?
『私は、サキちゃんの彼氏のリクに助けられた。リクはその時に命を…』
どうして見知らぬ人を優先したの?
『本当にごめん。私のせいなんよ。』
ねえ、どうして?
桜の花びらで埋め尽くされた地面を蹴る。
時々滑りそうになりながら、それでも私は全力で走る。
後ろから、カリンが追いかけてきているのはわかっていた。
『まだカリンには話せてなくて…』
カリンは…カリンだったら…なんて言うかな…。
足が止まる。
カリンは許すだろうか。
カリンを助けたのはツキ。リクを殺したのもツキだ。
カリンに…話すべきなの?私から話していいの…?
「ちょっ!サキ!ハァッ…!疲れたぁ…!どうしたの?急に!」
「カリン…。」
「大丈夫?何かあった?」
カリンは最近よく笑う。明るく笑ってくれる。
ツキの影響だということはわかっている。でも…でも…!
私はどうしたらいいんだろう。
「何もないよ。本当に用事思い出しただけ。
今日は誘ってくれてありがとう。また明日学校で!」
「それならいいけど…何かあったら言ってね?」
「…うん。ありがとう。」
私は嘘つきだろうか。
本当のことを言った方が良かったのかな。
カリンには、ツキから話してほしい。
私は…リクを殺した犯人を見つけたら殺すつもりでいた。
でも今は…その気持ちが揺らいでいる。
膝の上で拳銃を握りしめる。手が少し震えていた。
「晩御飯…食べなきゃ…。」
拳銃を机に置き、台所へ向かう。
額縁の中のリクと目が合った。
「去年のお花見か…」
綺麗だった桜と、手作りのお弁当を思い出す。
あんなに素敵な人間がいなくなるなんて、理不尽だ。
絶対におかしい。でも、やっぱり私は__
『ピーピー』
電子レンジが終わりを告げる音がする。
昨日作った炒め物の残りを温めただけのもの。
机に置いて、箸を持ってきた。
パンと手を合わせて、私は小さく呟いた。
「いただきます。」
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