桜と彼が大好きでした。

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第十三章 優 「……な…なんで…?」 「お前はバカなんか!?私を殺すなら殺せよ!  そう決めたんやろ!決めたこともできない子供なんやろ!?  もっと周りに助けを求めろよ!1人じゃないやろ!」 床には、私から吹き出した血液、ではなく、 オレンジジュースとその空き缶が転がっていた。 私は、床に座り込んでいて、銃を手放していた。 「…なんで邪魔したの…?」 「死んでほしくなかったからや。」 「私は…!あなたを殺そうとした…!」 「関係あらへん!そんなことどうでもいい。」 「…!?」 その時、玄関のドアがガチャっと開いて、カリンが飛び込んできた。 「サキ!」 「カリン!?」 私は、駆け寄ってきたカリンを受け止めた。 「サキのバカ!」 カリンは私の頬を叩いた。 その後すぐに泣き出して、私に強く抱きついてきた。 「…ッ…わ…私は…!サキと、ツキさんのどっちが  いなくなっても嫌だよ!!どっちか、だけなんて嫌だよ!!  わがまま言わせて!私は2人ともいないと嫌だ!」 カリンは、私の胸元でわんわん泣いた。 まるで小さな子供のように。 「…カリン……。」 「サキ。カリンは変わったやろ?正直になった。  自分の気持ちをはっきり言えるようになった。  …次は…サキの番ちゃうん?」 「ハハッ…あなたがそれ言う…?」 「サキ…!私たちさ、家族になろうよ!」 カリンが、私の目を見つめてきた。 「カリンは…いいの…?もう気付いたんでしょ?リクの死因。  カリンは許せるの?この人のこと。」 私はそう言ってツキさんのことを指さした。 「確かに、ショックだったよ…。  でも、同時によかったなって思った。」 「…!?な…!」 「サキも思わない?私はこう思ったよ。  リクらしい、優しい死に方だ…って。  理不尽な殺され方をしたわけじゃない。うっかり死んだわけでもない。  人の命を助けて死んだんだよ。すごく素敵だと思わない?」 「リクらしい…優しい…死に方…。」 「うん。リクは、桜の木が倒れそうになってるのを見て、  その近くにいた人を助けたんだよ。  『どうしよう』よりも先に『助けよう』って思ったんだよ。  私はそんなリクを誇る。いつまでも好きって言える。  …リクはさ…サキにもそう思ってもらいたいと思うよ。  リクがせっかく助けた命を無駄にしてほしくないし、  リクが愛したサキも死んでほしくない、  もしリクがいたらそう言いそうじゃない?」 「……」 心にあった重いものが、ストンと落ちた気がした。 視界が広くなって、明るくなった。 「…そう…だね…。そうかもしれない…。  リクの気持ちを理解してなかったよね…。  ごめん。ごめんね、カリン。  私、考えを改めようと思う。一年ぐらい頭冷やしてから、  同居させてもらおうかな。」 「一年も!?」 カリンが大きな声を出し、驚いた表情をした。 「水くさいやん。今すぐに、とかでもいいんやで?  サキのことやからさ、一年も考えてたら、  『もう一緒に住まなくてもいいかな〜』なーんて  考えになるん違う?」 「そ、そんなことは」 「サキだったらありえる!」 「それに、一緒に住んでたら、いつでも私を殺せるで?  こんなチャンス他にあるんか?」 ツキはしゃがんでグイッと私の顔を覗き込んだ。 まるで挑発するように。 「わかったよ…どっちでもいいよ…」 押しに押された結果、私は、大切な判断を2人に任せることにした。 こんなことしたの初めてだけど、たまにはこんなのもいっか、と 思ってしまった。
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