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第七章 友
「カリン、おはよー…カリン!?」
朝、学校に登校すると、友達のカリンの様子が少し変だった。
「ど、ど、どうした?誰かに何かされた?誰?殺る?」
私はそう言って、ポケットに手を伸ばした。
私のポケットには、防犯用のカッターが入っているのだ。
「落ち着いて!サキ!大丈夫だから!」
カリンが私の手をギュッと握りしめた。
「カリン?お母さんと、また何かあったの?」
カリンがパッと顔を上げた。
「ううん、違うの。逆なの!
すごく良い人がいてね、私を助けてくれたの。」
カリンは、目を細めて嬉しそうに話した。
「…そんなことがあったんだ…。
今度そのツキさんの家に遊びに行っていいかなあ?」
「わかんない。また聞いとくね。」
チャイムがなった。授業が始まるようだ。
そう思って席に座った瞬間、先生が慌てた顔で教室に駆け込んできた。
「サキさん!サキさん!ちょっと来て!!」
みんなの視線が私に集まる。
カリンと目が合った。心配してくれている優しい目だった。
私は、席を立って先生について行った。
私は、応接室に連れて行かれた。
長い机が置いてあり、無駄に広い部屋だった。
「サキさん。これは何?」
ガチャンと机に置かれたのは、見覚えのある黒い物体。
先生が出してきたのは、私の部屋に隠していた拳銃だった。
「先生こそ。それは何ですか?」
拳銃を持っていたら犯罪になるだろうか。
中学2年生なら、そこまで大きな罰は無いと信じたいが、
一応知らないフリをしてみることにした。
『とぼけないで!サキちゃん!!
私が学校に持って行ったのよ!!あなたの思い通りにはさせないわ!!』
オホホホホ、と電子的な笑い声が響いた。
先生のスマホには、叔母の顔が写っており、三者面談といった様子だった。
「叔母さんですか。こんにちは。
…先生。叔母は、書類上私の保護者ですが、
事実としては、私の保護者だったことは一度もありません。
守られたことなんかありません。
この人が気にしているのは私の保険金だけです。
それでも先生はこの人を保護者と言いますか?」
沈黙が続く。
「サキさんの保護者様。お電話切りますね。」
プッ、と間抜けな電子音と一緒に叔母の顔は消えた。
「サキさん…。あなたはとても賢い人よ。
こんなものを持っていたらダメなことぐらいわかるわよね?
真面目で賢くて、みんなから好かれている。それがあなた。
家庭に問題ありの不登校気味な子とも仲良くしてくれてるでしょう?」
自分に話しかけるような喋り方をしていた。
現実を見たくない。正直に言えば、学校に問題を持ち込みたく無いのだろう。
でも、私が気になったのは、全くそんなところではなかった。
「家庭に問題ありの不登校気味の子って、カリンのことですか?」
「えぇ。まあ。そうね。」
少し遠慮気味に答えた。
「先生にとって私は賢い子ですか?」
「?そうよ。」
不思議そうな顔をしている。
「じゃあ、先生にとってカリンは迷惑な子ですか?」
先生の顔が一気に引き攣った。
口は笑ってるけど、目が笑ってなかった。
「…っ!そ、そんなことないわ。大切なクラスの一員よ。」
『大切な』はどっちにかかっているのだろうか。
カリン?それとも自分がもつクラス?
バカみたいだ。
「…薄っぺらい言葉ですね。ペラッペラすぎて笑えもしません。
私にとってのカリンは、大好きで大切な大親友です。
言っておきますが、ボランティア精神で大親友なんかやってませんよ。」
座っていたイスから立ち、ドアに手をかけた。
「失礼しました。私は教室に戻りますね。」
完璧な笑顔を先生に向けた。
作り物の笑顔で、先生の心に何を与えたかは全く知らない。
でも、この次の日、担任の先生が自殺したなら、
私は人殺しだろうか。
みんなは泣いているのに、私だけ泣かなかったら
薄情者だろうか。
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