桜と彼が大好きでした。

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第八章 葉 春休みが明けて、カリンが学校に登校するようになった時には、 桜はもう葉桜だった。 「カリンー。もう行くんかー?」 「うん。これでももう遅刻だよ?」 「もうちょい一緒に寝よーやー。」 ふあぁとあくびが出る。 「ごめんね、ツキさん。私行くから!行ってきまーす!」 「おう。気をつけよー。」 カリンがいなくなった家は、何だか静かで、寂しさを感じた。 「〜♪」 鼻歌を歌いながら掃除機をかける。 ブオーと周りの空気を全て吸っていくみたいな音がした。 買い替えなあかんなあと現実を感じる。 その時、掃除機が机の脚にあたり、机の上にあったものがいくつか落ちた。 「あーやっちゃったあ。」 思わず声が出る。 しゃがんで膝をつき、落ちたものを拾った。 机の上にふと目を向けると、カリンの筆箱があった。 忘れ物だ。 「おー、まだあったんや!よかった!」 カリンが行っている学校は、私も在籍している。 家には、私の制服があった。(ついさっきまで忘れていた。) 久しぶりに着たが、サイズも大丈夫だし、汚れも目立たない。 私は、制服を着て、鞄とカリンの筆箱を持って 学校へ走った。 「あの、すみません、お姉さん?部外者は立ち入り禁止でして!」 「私、ここの生徒ですー。今まで不登校だったんですけどねーw」 「髪を染めるのは禁止だ!何年何組だ!?」 「2年です!クラスはわかんないでーす!  後、これは地毛でーす。すいませーん。」 次から次へと教師が飛んでくる。 うるさいな、とか思いつつも、少し面白いと感じている。 「ツ、ツキさん!?」 「おーカリン。いたいた。忘れ物しとったから届けにきたんや!  何組かわからんかったから迷ったわー」 カリンが困惑してオロオロと目を泳がせている。 「カリン?誰その人。」 カリンの横に、私のことを怪しげに見てる女の子がいた。 「カリンの友達か?仲良くしてくれてありがとな!」 「サキはちょっと待ってて。私もわかんなくてさ、  ツキさん、制服どうしたの!?」 「私はここの生徒やからな!入れるは入れるんよ。」 「あ、そういえば同い年だっけ…?」 「そうやで!筆箱忘れとったから届けにきただけやねんけどなー」 「あ、そうなんだ…ありがと…。」 「カリン、この人すごい目立ってる。早く行こ。」 「あ、そうだね。ツキさん、本当にありがとう。またね!」 2人はそそくさと私の元から離れていった。 確かにめっちゃ視線を感じる。 「あの人誰?誰かの保護者?」 「お母さんかお姉さんかな?」 「あの白い髪の人可愛くね?マジパない。」 「さっきカリンと話してたよ?」 「髪長っ!」 「マジ美形だわ。」 ここまで話し声が聞こえてくる。 早く帰ろうと、廊下を歩いていた時、知らない人に声をかけられた。 「お姉さん可愛いねwもう帰るの?2年でしょ。もしかして不登校?ww」 一見顔は良いけど頭の中が空っぽであろう男子だった。 「私は学校に行く必要がないから行ってないだけやで。  早起きもしんどいしなあ。君らも大変やな!」 ちょっと煽ってから帰ろうと思った。 が、その男子生徒は案外しつこかったのだ。 「は?俺らよりバカなくせに調子乗んなよ。  俺が付き合ってやるから来いよ。」 周りの連れが笑った。 問題を起こすつもりは無かったんだけど、 まあちょっとぐらいなら…と思ってしまった。 「その喧嘩買ってあげるわ。小テストあるやろ?クソむずいやつ。  それ満点取ってやるよ。取れたら何でも言うこと聞けよ?」 男子生徒はプッチンしたようで、 「ああいいぜ!不登校のバカに負ける気しねーわ!」 と言った。 1時間後、バカどもとの賭けの勝った私は、 家に大量のプリンやケーキを買ってきてもらったのだった。
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