桜と彼が大好きでした。

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第一章 夢 『見てあれ!もう咲いてる!』 『きれいだねー。今度お花見行こっか。』 『いいの!?』 『サキのお弁当楽しみにしてる。』 『任せて。張り切って作っちゃう!』 3月なのに桜が満開のあの年。あの日。 私達は、幸せに満ちた生活を送っていた。 桜並木の下を歩く。 まだ咲いたばかりの桜は、花びらを落とすことなく 完璧な状態でさらさらと揺れていた。 堂々と立っている木の幹は、黒く太い。年季が入っていそうだ。 『リクは、好きな具ある?』 『んー。強いて言うならー…甘い卵焼き!!』 『ハハっ!何それ!かわいい!』 『えーそう?サキは何なの?』 『…唐揚げとか?』 『…フフっ。うん、いいんじゃない?』 『今笑ったでしょ?』 『気のせいだって〜』 暖かい空気が私たちの間を通り、桜を揺らす。 『きれいだね。』 私は桜に見惚れる。 『リク?』 私は振り返る。 気づいた時には彼はもういない。 私はそこで、また気づく。 ああ、これは夢なんだ。 彼はもう…
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