4人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 夢
『見てあれ!もう咲いてる!』
『きれいだねー。今度お花見行こっか。』
『いいの!?』
『サキのお弁当楽しみにしてる。』
『任せて。張り切って作っちゃう!』
3月なのに桜が満開のあの年。あの日。
私達は、幸せに満ちた生活を送っていた。
桜並木の下を歩く。
まだ咲いたばかりの桜は、花びらを落とすことなく
完璧な状態でさらさらと揺れていた。
堂々と立っている木の幹は、黒く太い。年季が入っていそうだ。
『リクは、好きな具ある?』
『んー。強いて言うならー…甘い卵焼き!!』
『ハハっ!何それ!かわいい!』
『えーそう?サキは何なの?』
『…唐揚げとか?』
『…フフっ。うん、いいんじゃない?』
『今笑ったでしょ?』
『気のせいだって〜』
暖かい空気が私たちの間を通り、桜を揺らす。
『きれいだね。』
私は桜に見惚れる。
『リク?』
私は振り返る。
気づいた時には彼はもういない。
私はそこで、また気づく。
ああ、これは夢なんだ。
彼はもう…
最初のコメントを投稿しよう!