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「ワオぉぉン!!」
ピンク色のライトだけが照らす薄暗いダンスホールのステージ上で犬嶋春陽は吠えた。
「ワン!ワン!ワン!ワン!!」
マイクを握った犬嶋が犬の鳴き真似をするたびに、オーディエンスの熱が高まる。
そこら中から犬嶋を呼ぶ黄色い声援が聞こえてきた。
「犬嶋くーん!!」
「愛してるよ春陽ー!!」
十分ホールが加熱したところで犬嶋は泣き真似をやめた。
片手に持った酒の入ったグラスを口元に近づけ、一気に呷る。
「俺も愛してるぜー!!せっかくステージにあがったんだ、気の利いたこと言わないと盛り下がっちまうよなぁ!」
またも女子の甲高い声が飛び交った。
犬嶋は片手をあげてふにゃりとだらしない笑顔を見せる。
「俺を愛してくれた女の子に感謝を示すためのお礼をしようと思う。踊り疲れた女の子たちに朗報だ!今から先着100名様に俺のちんぽをプレゼントするぜ!受付は男子トイレの2つ目の個室だ!おっと!もてない男たちも落ち込むな!トイレにくれば残飯にありつけるぜ!今夜だけは男も女も恥を捨てろ!絶対に後悔はさせねぇぞ!!」
ダンスホールが爆笑に包まれた。
酒とこの場の熱に高揚した男女はもう正常な判断などできない。
「アオぉぉン!!!」
遠吠えが響いた。
犬嶋はステージから勢いよく下りて走り出す。
ホールの中に詰め込まれた人間たちはみな犬嶋のしっぽを追うようについていく。
まるで家来を従える王様のような犬嶋は、股間を膨らませて誰よりも早くトイレの個室の中に入った。
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