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「よお野田」
「おう犬嶋」
犬嶋はやってきた野田に挨拶をした。
いつもの4人は校舎裏に集まって、いつものように地べたに座っている。
「今日どうすんだ?犬嶋」
「今日は先約があんだ。悪いな」
「アコさんか?」
「まあな」
「セックスはしたの?」
泉が笑い声まじりに聞いた。
犬嶋も笑いながら答えた。
「まだやってねぇよ」
「なんだ。お前らしくもない」
袋から4個目のハンバーガーを取り出した王森は、まだ満ち足りない胃に食料を補給する。
「へへ。たまにはじっくり攻めるのもいいさ。ロマンスを楽しんでんだよ俺は」
「何がロマンスだ、ヤリチンのくせに。あの日一緒にデートしたんだろ?ヤらないで何してたんだ?」
「別に何も。ゲーセンに行ったりした」
「あの日ってなんだよ。俺らに内緒で何かしたのか?」
「ああ。アコさんに頼まれてな、ナギサさんのDV彼氏をぶちのめしに行ったんだ」
「マジかよ……俺そういうのは勘弁だな。暴力なんて野蛮だ」
「僕も遠慮しておきたいよ」
「それでナギサさんはどうなったんだ?」
「ああ。DVから解放されて、今は王森と付き合ってるよ」
「マジかよ王森!やるなぁ!」
「へへ。冗談だよ」
「あん?冗談じゃねぇぞ」
「……え?」
犬嶋はポカンと口を開けた。
王森はきょとんとして首を傾げている。
「あ……え?お前ナギサさんと付き合ってんのか?」
「ああ。告白されてな」
「あの姉ちゃんもなかなかだな……」
「なんだよ。嫉妬か?」
「いやびっくりしてんだよ。ナギサさんがお前と付き合うのはまあ……少し分かるが、お前がOKするなんてなぁ」
「別に俺は恋愛反対主義じゃねぇぞ。女より飯が大事ってだけだ。俺を好きになってくれる人がいれば尊重するさ」
「そうか。頑張れよ」
犬嶋は酒に口をつける。
すごくいい気分になってきた。
今日も空は青いし、太陽だって輝いている。
「暑くなってきたなぁ」
「波の音が聞こえてくるぜ。海は行くよな犬嶋」
「当たり前だろ。女の子の焼けた肌が俺は好きなんだ」
「小麦色の肌……柔らかい胸……それに潮の匂いが混じった唇……たまんないね」
「海もいいけど、夏祭りは行くの?」
「ああもちろんだ。今年もお前の浴衣姿が見たいよ」
「えへへ。楽しみにしてて」
犬嶋は泉の肩を抱いた
彼はアコと出会って、少しだけ傷が癒えた。
しかし全てが解決したとは言えない。
長い時間しみ込んだ後悔は、そう簡単に払拭できるものではない。
それでも犬嶋は笑っていられた。
全てを受け入れたうえで、笑みを溢した。
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