第二話

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第二話

 病院からの帰り道、真琴は一軒の店の前で足を止めた。お洒落な看板もなく、店の中も見えない、何の店か分からない怪しい店。でも、真琴は何故だかその店が気になって仕方なく、入り口の扉を開けて中にはいる。  店内は優しいオレンジ色の灯に照らされた、雑貨屋だった。 「いらっしゃいませ」  若い女性の店員が声を掛けてきた。 「あ。えっと…」  真琴は何と答えていいか困ってしまう。  そんな真琴の様子を見た店員の女性が、クスっと笑う。 「何の店か分からずに入ったんでしょう!」  ズバリと言い当てられてしまう。 「はい…」  真琴は素直に認める。 「雑貨屋さんですか?」 「ん~雑貨屋さん……かな?」  なんとも微妙な返事の店員さん。真琴は商品を一通りみてみる。その中の透明で小さい丸い水晶が気になった。 「その水晶が気になるの?」 「キラキラして綺麗ですね」  店員は水晶を真琴の手の平に乗せる。手に乗せた瞬間水晶が薄い緑色に光った。   「えっ!なに。光ってる」  真琴は驚愕する。  だが、すぐに水晶は元の透明に戻ってしまう。 「その水晶あなたにあげるわ。本当は売り物じゃないんだけどね。あなたなら良いかな」 「さすがに貰うわけにはいけないですよ。水晶なんて高価なもの」 「いいから!貰ってちょうだい」 「…分かりました。ありがとうございます」  本当に良いのかな?と思いながらも、小さな木箱に水晶を入れてもらい受け取る。 「あ!僕、一条真琴って言います!本当にありがとうございました」 「私は中村(あおい)。また良かったら来てちょうだい」  店を出ると辺りは薄暗くなっていた。  真琴は水晶の入った木箱を鞄にしまい歩き出した。 (良い人だったな。今度京兄や友達を連れて行ってみよう)  幸せな気分になりながら真琴は家に帰る。
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