シュガーよりスパイス

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呼ばれた席には、声を掛けに来た爽やかイケメンと、穏やかで優しそうな男性。そして女性達が来たことを最後まで反対していたことが伺える、口をへの字に曲げた男性が座っていた。 連れられて来た順に軽く会釈しながら席に着くと、杏はそのハズレとも思われる人の前になった。 この人は、嫌だったんだろうなぁ。 と、少しばかり頬を引き攣らせながらも、杏は嬉しそうな友人達の為、我慢して座ることにした。 杏とその前の席の人は、一言も言葉を交わすことは無く、ただ出されている料理を口に入れるだけだったけど、どうやら横は会話が弾んでいる。 「そうなんだ。みんな起業サークルが一緒で?」 「そう。その中でも本当に起業した奴らでよく集まるって感じかな?」 「じゃあみんな社長さんなんだ。」 真弓や奈々の黄色い声を聞きながら、眉をしかめる前の人の方を見ることも出来ずに、杏は出来るだけ小さな声で、へぇ。と言った。 「(ひろ)が一番早かったよな。会社立ち上げるの。」 爽やかな直人(なおと)さんが、杏の前の席の彼を見ながら言った。 「金が欲しかっただけだから。」 どこか投げやりに言った声は無駄にいい声だった。 目力が強くて、全身黒ずくめ、ずっと何かに怒ったようにピリピリとした空気を出して無言を貫く彼の前の席は、少なくとも快適では無かった。 杏は無意識に肩をすぼめてチビチビとお酒を飲み、ちょびちょびとご飯を口にした。 どうやら直人さん達の話を聞くに、紘さんは一人でできる規模のパソコン関係の何かをしてるらしいってことぐらいしか杏には分からなかった。
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