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「そっかぁ。じゃあみんなは製菓の専門学校の友達なんだね。」
「うん。私が◯◯ホテルで、奈々が□□パティスリー、杏が実家の和菓子屋で出雲屋だよね。」
「え、杏さんって和菓子屋なの?」
穏やかな康太さんに視線が集まった。
「和菓子屋で杏って、ほらあんこの『餡(あん)』って感じで、ごめんちょっと面白かった。」
全然笑えなかった。あまりのつまならさに女性陣の顔は固まった。
「お前何それつまんないだろ。それに杏さんにも失礼だし。」
「ごめん、ごめんね。」
杏はいいですよ。と返事をした。
この手のイジリは慣れていた。
小学校の時からずっとされて来たし…
「生まれたのが杏の季節なんだろ。和菓子屋の娘なんだから、季節を踏まえてることくらい想像つくだろ…」
今まで自発的に話すことの無かった、紘さんが、こちらを見ることも無くイケボを放った。
全くもってその通りだった。
ヤバい。不覚にも一瞬格好いいなんて思ってしまった。
…一瞬ね。
いつも茶化される私の名前。
それをなんだか大事にしてくれたように感じたのだ。
気のせいだと思うけど…
でも和菓子屋で「あん」は我ながら無いでしょ。とはずっと思ってる。
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