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隣でスマホの通知音が聞こえ、紘って人がスマホを取り出し確認した。
私には関係無いけど。
信号早く変わってよ。
と思ったけど、交通量の多い交差点で、残念ながらまだまだ変わりそうには無かった。
「なぁ…」
いつか声を掛けて来るかもしれないとは思ってた。予想していたことなのに杏の体が小さくビクンとした。
さっきは無防備だったから、ふいをつかれて傷ついてしまった。でも今回はそうじゃ無い。
この人がどんな人でどんなことを言って来る人なのか、もう知っている。
もうこれ以上、何かを言われるのは嫌だった。万が一それが謝罪の言葉だったとしても。
だから杏は相手の言葉がそれ以上発せられないようなに、遮るように声を出した。
「何も間違ってないですから。」
意気込んで話し始めたので、変に声が大きくなってしまった。
「全部、紘さんの、言う通りですから。」
やばい、声が震える。
鼻の奥がツンとして、込み上げてしまうものがあった。声の震えがバレないように、声の大きさは最後は尻つぼみになっていった。
こんな人の前で自分の弱さをさらすのは何だか悔しい気がした。
静かに熱い息をひとつゆっくり吐いて自分を落ち着ける。
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