シュガーよりスパイス

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〜〜〜〜 元々おじいちゃんの職人弟子だったお父さん。ひょうきんで陽気なお父さんとは違って、おじいちゃんはガミガミ怒る厳しい職人だった。 「子供は作業場に入ってくるんじゃない!」 と杏は作業場に立ち入ることを許されなかった。怖くてこの場所を避けて育ちそうなものであるが、それでも杏は箱とバケツを積み上げて、高い窓からこっそりと中を覗いて幼少期を過ごした。 険しい顔のおじいちゃんが、綺麗な菓子を生み出していく。その真剣な眼差しと、ひとつずつ丁寧に生み出されていく菓子が、魔法のようで印象的だった。 そんな厳しいおじいちゃん。 季節の練り切りが出来ては、杏と共に大きな河川敷へと行って決まったベンチで一緒に食べた。 正直冬は寒くて、家で食べたかった。 けど、ちょっと怖いおじいちゃんにそんなことは言えない。 どうして私だけ一緒に食べさせてくれるのかも分からなかったけど、杏が手のひらに収まるほどの新しい季節を知らせる菓子に、小さな風呂敷を開けて出会い、顔をほころばせるのを見守っていた。 その時だけは、いつも怖いおじいちゃんが嬉しそうだった気がする。 いつも手の中で可愛く待っている練り切りを見ると、食べるのが勿体無いと思ったものだ。こんなに可愛いものを、こんな怖いおじいちゃんが作ってるなんてなんだか不思議。 菓子を口にする杏に 「杏は和菓子、好きか?」 とこちらも見ずに聞いた。 「好きだよ。」 なんでそんなこと聞くんだろう? 若い人が西洋菓子を好む時代。 けど、みんな好きだと思っていた杏はどうしておじいちゃんがそんなことを聞くのか分からなかった。 「そうか。」 その横顔が誇らしげで格好良かった。 そう、季節の練り切りは、杏にとってはおじいちゃんとの思い出。 しばらくするとバケツの上は危ないと、作業場の外、店側から見ることが許された。相変わらず作業場に入れはしないけど。
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