出雲屋

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ふんふんふ〜ん♪ 出雲杏(いずもあん)は鼻歌を歌いながら自転車を漕いでいた。 そして歌い出す変な歌。 「そ〜ろそ〜ろ来るよ〜  大好きな季節が〜  一足先に俺が〜  教えてあげるんだ〜い♪」 曲はまだまだ続くけど、書くのはここまでにしておこう。ちなみにいろんな曲があって、結局どの季節も大好きって歌う歌。彼女の名誉のために言うのなら、音痴なんじゃ無い。元々のメロディーが変なのだ。 まだ風は冷たいが、日差しがある所は暖かくなり始めた。木々の蕾がいかばかりか膨らみ始めている気がする。 左を見上げれば駅ビルがそびえたち、右を見上げれば高層住宅が建ち並ぶ。そんな狭間に取り残されたようにある古ぼけた商店街。 そんなに活気は無いまでも、肩寄せあって過ごす商店街。その一角にある杏の家、和菓子屋兼甘味処出雲屋(わがしやけんかんみどころいずもや)。 杏は店の裏手に配達用の重めの自転車を停めて、裏口から入った。
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