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杏は暖簾を出してすぐ配達へと向かう。
杏がいない店内で祐馬が今年の春の練り切りとお茶を小さなお盆に乗せて、友香の席へと運んで来た。その表情を見て察した友香が言った。
「また食べてもらえなかったんだ。」
「うるさい。」
私には和菓子の細かい味は分からない。
ただ小さな手のひらに収まるほどの、見るだけでも可愛い菓子。その菓子が春を告げている。
祐馬は友香が食べるのを不安そうにら見つめる。
いや、そんなに見られたら食べづらいんだよね。といつも思うけど、好きな人から見られるのは恥ずかしいけど嫌じゃない。
勿体無いけど楊枝で割って食べる。
そしてお茶を飲むのだけど、いつまでもこっちを見てるから
「美味しいよ。細かいことは何にも分かんないけど。」
と申し訳無いながらに言った。
そんな私の言葉に、心底ほっとした表情を見せるんだから、呼ばれたら来てしまう。どうして私なのかは分かんないけど。
こんなんでいいのかな?
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