第一章 一番にはなれない私

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しかしながらまたドレスを着るのはあれだし、かといってバスタオルを巻くのはいかにもヤります感があって嫌なので、紐で裾を踏まない程度にたくし上げてどうにか凌いだ。 「シャワー、ありがとうございました……」 リビングで部長は、ソファーに座って携帯を見ていた。 私に気づき、顔を上げる。 「いえ。 座っていてください」 「はい」 私がソファーに座るのと代わるかのように彼は立ち上がった。 そのままダイニングの奥へ消え、すぐにグラスを片手に戻ってきた。 「よかったら飲んで待っていてください。 私もシャワーを浴びてきますので」 「ありがとうございます」 そのまま、部長がリビングを出ていく。 ひとりになり、テーブルの上に置かれたグラスに手を伸ばした。 パチパチと泡の弾けるそれはレモンフレーバーの炭酸水で、少しだけ気持ちがリラックスした。 それにしても、広い家だ。 リビングダイニングだけで軽く、今住んでいるマンションの部屋より広い。 座っているソファーの向こうには暖炉まで見えた。 ライトブラウンの大きなソファーは革張りだし。 ほんと、富士野部長ってただの部長なのかな? 炭酸水を飲みながらぼーっと部屋の中を見ていたら、そのうち部長もシャワーを終えてきた。
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