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濡れ髪を雑に撫でつけ、まだ上気した肌の彼は女の私なんかよりも色気がありすぎて、つい目を逸らしてしまう。
「紀藤さん」
「……はい」
促すように名前を呼ばれ、立ち上がる。
少し前を歩く部長に着いていった。
連れられていった部屋は当然、寝室だ。
「おいで」
広いベッドに座った彼が隣を軽くぽんぽんと叩き、優しく微笑みかける。
「……はい」
それに誘われるかのようにふらふらとそこに座った。
「本当にいいんですね?」
私の頬に触れ、眼鏡の向こうからじっと見つめている部長の瞳は、悲しみをたたえている。
「はい。
……お願い、します」
その目を真っ直ぐに見つめ返し、了承の返事をする。
「わかりました」
私の言葉で彼は、重々しく頷いた。
そっと部長が、私をベッドに横たわらせる。
「その。
富士野部長」
「はい」
「……ハジメテ、なので、その。
……優しくしてもらえると……」
こんなことを告白するのは恥ずかしくて、みるみる身体中が熱くなっていく。
「わかりました。
できるだけ優しくしますね」
私の髪を撫で、額に口付けを落としてきた部長は、酷く優しかった。
「それじゃあ」
そのひと言で、部長の纏う空気が変わった気がする。
現に。
「目は閉じてろ」
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