第一章 一番にはなれない私

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ダイニングの壁向こうから音が聞こえるので、横の通路から覗いたらそこにいた。 「もうできるから待ってろ」 そこはキッチンで、部長はフライパンからお皿に料理を移している。 「なにか手伝います」 「そうか? じゃあ、もうパンが焼けるからそこの皿にのせて持っていってくれ」 「はい」 彼が視線を向けた先にはトースターがあり、お皿も準備してあった。 すぐにチン!と音が鳴り、中に入っていたバケットを皿に移す。 そのあいだに部長は料理をダイニングに運んでいた。 「おまたせしました」 「わるいな」 私がダイニングテーブルにお皿を置くのを見計らったかのように、コーヒーを注いだマグカップを置いて部長が座る。 「じゃあ、食べようか」 「はい」 ふたり、向かいあって朝食を取る。 具だくさんのオープンオムレツと添えられた野菜、あとはベーコンと白菜のスープとバケット。 どれも味がよく、部長は料理上手らしい。 それにしても。 黙々と食べながら目の前に座る部長をちらり。 彼とふたりでこうやって朝ごはんを食べているなんて、なんか不思議な気分だ。 食後、なんか気まずくて速攻で帰ろうと思ったのに、部長がお代わりのコーヒーを入れてくれるので仕方なく留まる。 「それで、昨日の話なんだけどな」
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