第一章 一番にはなれない私

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私としては昨日のあれはすでに忘れてしまいたい過去なのだ。 なのに改めて切り出され、カップを持つ手がぴくりと反応した。 「あの。 昨日は無理を聞いていただき、ありがとうございました。 その、もうそれは、大丈夫ですので」 部長のおかげで、あんなに痛んでいた胸の傷は完全に塞がっていた。 もう、次に裕司さんとは、普通に義理の妹として会える。 「いや、それじゃなくて。 あ、いや、紀藤の役に立てたんならいいけどな」 眼鏡の下で彼が、目尻を下げる。 それはとても嬉しそうで、頬がほのかに熱を持つ。 それにしてもいつも敬語の彼が、口調が違うのが気にかかった。 「昨日、『どんなに努力しても、姉が一番で私は二番』って言ってただろ。 紀藤はそれでいいのか」 部長は真剣だが、なにを言いたいのかわからない。 「別に私は、姉からあの人を奪いたいとかそんなことは……」 「違う」 首を横に振られたって、私の気持ちに嘘はない。 それに勝手に否定されて、むっとした。 「違いません」 「違う。 俺が言いたいのはそんなことじゃない。 紀藤はいつまでも、二番に甘んじていいのか、ってことだ」 やはり、部長がなにを言いたいのか理解できない。 私が二番に甘んじている?
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