第一章 一番にはなれない私

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それは女の私でもぽーっとなりそうなほど美しかった。 裕司さんが私ではなく、姉を選んだのがよくわかる。 「裕司さん、お姉ちゃんをよろしくお願いします。 お姉ちゃん、こう見えてけっこう抜けてるから」 自分の気持ちなどおくびにも出さず、ふざけるように笑ってみせた。 「知ってる。 昨日も『充電器が刺さらないの』って、自分の携帯にオレの携帯の充電コード一生懸命挿そうとしてた。 端子が違うから無理なのにな」 思い出しているのか、おかしそうに裕司さんがくつくつと笑う。 私も一緒に、笑っておいた。 「もう、裕司さんったら!」 自分の失敗を晒されて、むくれる姉も大変愛らしい。 それも、私にはないものだ。 「でもこれで、明日美ちゃんはオレの義妹になるんだよな。 今まで以上に頼ってくれよな」 ひとしきり笑って気が済んだのか、裕司さんは私に優しく微笑みかけた。 「うん、頼りにしてる、お義兄ちゃん」 にっこりと笑顔を作って答える。 私の気持ちを姉に、彼に、気づかれてはいけない。 式の時間も近づいてきたので、姉たちと別れて礼拝堂の席に座る。 裕司さんは私が高校生のとき、家庭教師だった。 彼は私を妹のように可愛がってくれたし、もしかしたらって期待もした。 ――けれど。
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