645人が本棚に入れています
本棚に追加
それは女の私でもぽーっとなりそうなほど美しかった。
裕司さんが私ではなく、姉を選んだのがよくわかる。
「裕司さん、お姉ちゃんをよろしくお願いします。
お姉ちゃん、こう見えてけっこう抜けてるから」
自分の気持ちなどおくびにも出さず、ふざけるように笑ってみせた。
「知ってる。
昨日も『充電器が刺さらないの』って、自分の携帯にオレの携帯の充電コード一生懸命挿そうとしてた。
端子が違うから無理なのにな」
思い出しているのか、おかしそうに裕司さんがくつくつと笑う。
私も一緒に、笑っておいた。
「もう、裕司さんったら!」
自分の失敗を晒されて、むくれる姉も大変愛らしい。
それも、私にはないものだ。
「でもこれで、明日美ちゃんはオレの義妹になるんだよな。
今まで以上に頼ってくれよな」
ひとしきり笑って気が済んだのか、裕司さんは私に優しく微笑みかけた。
「うん、頼りにしてる、お義兄ちゃん」
にっこりと笑顔を作って答える。
私の気持ちを姉に、彼に、気づかれてはいけない。
式の時間も近づいてきたので、姉たちと別れて礼拝堂の席に座る。
裕司さんは私が高校生のとき、家庭教師だった。
彼は私を妹のように可愛がってくれたし、もしかしたらって期待もした。
――けれど。
最初のコメントを投稿しよう!