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その結果が同じでも、私はもっと早くに彼を吹っ切って、新しい恋に進めていたかもしれない。
だからもっと、自分に自信が、欲しい。
「わかった。
なら俺が、一番にしてやる」
右の口端をつり上げ、ニヤリと笑う富士野部長を、ただ見ていた。
話が終わったあと、部長はマンションまで私を送ってくれた。
「あの。
今日も眼鏡、違うんですね」
「ん?
ああ」
部長の車は黒のSUVだった。
車体に付いているエンブレムはドイツの有名スポーツカーメーカーのものだ。
たぶん、社長の乗っている高級外車Cクラスよりも高い。
「こっちはプライベートで、会社でかけているのは仕事用」
「そうなんですね」
今日も彼は、黒縁ハーフリムの眼鏡をかけている。
さらにスリムフィットのVネック黒カットソーと白のスキニーパンツがそのスタイルのよさを強調していた。
「聞きたいのはそれだけか」
「えっ、あっ」
意地悪く、ニヤッと彼が笑う。
おかげで頬がかっと熱くなった。
たぶん、私が気になっていることなんてお見通しなんだ。
「会社のであれは対外用で、こっちが素に近い俺」
聞かなくても部長が、私の疑問に答えてくれる。
「それって、演技しているってことですか?」
私たちは部長にずっと欺かれていた?
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